借金生活のはじまり
学生ローンというものを知ったのは、大学3年生になってからだ。
それまでは、日々平穏な暮らしをしていた。
昼間は学業に専念し、夜は喫茶店で遅番のバイトに明け暮れる毎日だった。
なんの刺激もない、ごくごくありふれた生活である。
そんなある日、同じ大学の友人から、「うまい話がある」とビジネスの話を持ち掛けられた。
それまでの自分は、大学卒業後は並みの会社に就職できればいい・・そう考えていた。
もちろん、ビジネスなんてこれっぽっちも考えていなかったので、友人からの誘いはあまりにも唐突であったが、平凡な人生にドップリと浸かった自分の身体に、強烈な電流が流れたのを今でも覚えている。
誰かと同じ目標に向かって、大きな事を成し遂げられるかもしれない。
そう思ったのだ。
以下、マルチ商法の体験談を記すが、これはあくまでも私個人の経験談である。
マルチ商法の現実
淡い夢を抱いていられたのも束の間だった。
ビジネスをはじめるにあたり、投資資金として30万円掛かるとのこと。
そんな金はないというと、その友人は「学生ローンから借りればいい」と言うのだ。
学生ローン?何だそれ?
聞けば、学生なら誰でも金を借りられるローン会社との事だ。
そんな聞いた事もない会社からお金を借りるという事にもの凄く抵抗を感じたが、友人の話ではちゃんとした会社だし大丈夫。
親にバレる事もないし連絡なども行かないというので、その場の雰囲気に呑まれて渋々学生ローンがある高田馬場へと向かう事にした。
おかしいと確信した瞬間
高田馬場に着き、学生ローンに向かう途中、友人から「使用目的を書く欄があるから、そこは車購入と書け」と指示された。
何で?と思ったが、その方が借りやすいからとの事なので、従う事にした。
高田馬場の駅から歩いて1~2分のところに、学生ローンの看板があっちこっちにある。
中でも一際目立つ某学生ローンの会社に連れていかれた。
店内でのやりとり
お店に入ると、従業員から要件を尋ねられた。
はじめての申し込みである事を告げると、学生証と免許証の提示を求められ、新規の申込書を記入させられた。
申込書の記入が終わると、従業員からいろいろと聞かれた。
使用目的に「自動車の購入」と書いたのだが、駐車場は確保しているのか?とか、何だか怪しまれている様子だった。
駐車場なんか借りているわけもなく、その辺が態度に出てしまったのだろう。
しかし、なんでたかが使用目的をそんなに根掘り葉掘り聞くのかが不思議だったが、その答えはすぐにわかった。
マルチ商法・儲け話に関する注意喚起の紙を見せられ、話によるとこういった詐欺にあう学生が増えているとの事。
なるほど、それで使用目的をあんなにしつこく聞いてくるのか!と、妙に納得してしまった自分がいるにも関わらず、学生ローンとの契約はそのまま最後まで進めてしまった。
この時に気づくべきだったのだが、あの状況で冷静に判断する事は難しいと思う。
おそらく、ほとんどの人たちも、「何かおかしい」と思いつつも、今さら引けない状況に追い込まれているのだと思う。
ある意味マインドコントロールとでもいうべきだろうか。
尚、今回の件は、まだ詐欺にあったのかどうかはわからない。
DVDの購入で55万円もの出費だ。
学生ローンからの借金は、1社で借りる事はできず、2社に分けて借りることになった。
もし、今回の件が騙されたのだとしたら、おそらく金は戻ってこないだろう。
学生ローンからの注意喚起を、もっとちゃんと聞くべきだったと、今さらながら後悔である。